ゴォォォー…と暖房の音が聞こえる。 シャーペンが机を叩く音。ペンが丸を書く音。 時々鳴る部屋のきしむ音。 世界は音で溢れている。 かつて僕のまわりにも音が溢れていた。 ショパン、バッハ、モーツァルト、ベートーヴェン。 今は無音だ。 何もない。全てを捨てた。僕の中の音を全部。 これ以上音と生きていけなかった。 僕が音を奏でるだけでまわりを不幸にしてしまう。