「稲村桜ねぇ…。
あの子あんまり評判良くないよ?」
「そうなのかお兄様」
「ああ。
サボり魔のくせに、先生たちは怒らねぇの。
父親が理事長だからだろうなぁ」
「父親の権力振り回しているってわけか」
「あと、これも噂だけど。
…先輩と関わりあるみたいですねぇ」
ニヤリと悪魔の微笑みを浮かべる一光お兄様。
「…だからどうしたドブウサギ」
「それ言うならドブネズミだろ」
一光お兄様、突っ込むところそこですか?
「噂なんですけどねぇ。
なんでもアノ稲村桜、特に体育をサボるみたいですよ。
その理由が、見せたくない傷があるとか」
お兄様が言った瞬間、瀬川様の顔が歪んだ。
「稲村桜が傷を負ったのは中学生の時。
噂で聞いた年代を合わせると、重なるんスよねぇ」
「………」
「先輩がドーナツ写真を撮ったあとと」
ドーナツ写真。
テスト勉強が出来なかったお詫びに、あたしがカナコさんに見せた、あの瀬川様が笑顔の写真。
実はあの写真だけなんです。
瀬川様が笑っているのは。


