「ならあたしにくれませんか?」
「良いよ」
恐るべし和歌奈さん。
おしとやかそうな感じだけど、中身は想像と違うなぁ。
「ふわぁ…相変わらず美味しいですわ」
「和歌奈だけだよ。
お父様もお母様も、お兄様もこの紅茶嫌いでさ。
結構余っているんだ」
「本当ですの?
ならあたしお土産にもらってもよろしくて?
あたしの家は、皆この紅茶が好きですから」
なるほど。
和歌奈さんのとんでもない辛党は、親譲りか。
「瀬川もいる?」
宇佐美くんは瀬川を見た。
「……いえ、お断りします」
コトンッと空っぽになったティーカップを置いた瀬川。
…コイツも恐るべし。
まぁお土産にするほど好きではなさそうだね。
「言うと思った。
じゃ、この間お祖父様がくれた紅茶持ち帰る?
それなら、瀬川も気に入るはずなんだ。
あ、カナコさんは知らないね。
この紅茶は、俺のお祖父様がくれたんだ。
お祖父様は常に自分で紅茶を作るからね。
良いのが作れるとくれるんだ。
変わった味ばかりだから、気に入る人は少ないんだけどね。
カナコさん用にまた淹れてくるね」
私はまだ何も言っていないのに、宇佐美くんはサッサと部屋を出て行った。
…また不思議な味は困りますよ―――――ッ!


