「今足を解くから、大人しくしてろ」
「うん、ありがとう…」
私たちの光景を、桜ちゃんは目を真ん丸くしながら見ていた。
「なーくん…」
「桜。
何でこんなことをした。
宮野には手を出すなと言ったはずだが?」
普通そうに見える、瀬川の姿や声。
…でも、どこか違う。
足に当たる呼吸は少し荒く聞こえ、ロープを解くその手も震えているように見える。
どうしたんだろう…?
「だって…。
なーくん…あたしのこと…見ていないから…」
「…前からだろ」
「なーくん…」
「ごめん桜。
…俺は、宮野が好きなんだ。
だから…桜の思いには答えられない」
俺?
好き?
…目の前にいるのは、
本当に、瀬川なのでしょうか…?
瀬川、普段は一人称が“僕”で。
“俺”なんて言う瀬川、初めて見た…。


