てのひら


その日の夜、家に着いてスマホを出すと、
告白された相手から少し変わった内容のラインが、何通も来ていた。

『こんばんわ、俺だよ
今頃郁ちゃんはベッドの上で
ゴロゴロしながらこれ呼んでる?』

『郁ちゃんはすぐ俺のものに
してあげるからね!』

『そうだ、好きな花なに?』

『あと、嫌いな教科も知りたいな』

『返信待ってるよ?』

さすがにこんな変わったラインがきたのは
この人が初めてだった。

少し返信に戸惑って、結局送ったのは
こんな文章だった。

『こんばんわ、郁です』

『私は誰のものでもないですよ♪(笑)』

『好きな花…?んー、なんだろ…。
カーネーションとか、好きですよ♪』

『嫌いな教科は、国語です(笑)』

すると、立て続けに送っている間にもすでに
送られたメッセージは既読がついていた。
全部送り終えたところですぐに返信がきた。

『そうなんだ♪
これからもいっぱい知りたいな
俺に郁ちゃんの色々な事教えてよ』

『どうせすぐ俺のものになるんだから』

また怖い感じの内容だった。返信しようか迷っていたら、

『返信、待ってるから』

と来たのでしかたなく、

『質問してくれれば大抵のことは
答えるつもりですよ~』

『だーかーらー、
あたしは誰のものでもないですー(笑)』

と、送って、その日はすぐに寝た。