『郁さん、郁さん…?』

本の中に入り込んでいた郁は
呼ばれていることにすぐは気づけなかった。
しばらくして、

「郁さん聞こえてる?(笑)」

「…あ、ごめんなさい、気づけなくて。
あの、どれぐらい呼びましたか?」

「もう5回くらいかな(笑)」

(明るく笑顔を向けてくるこの男の子は…?
私、話したことないはずなんだけどなぁ)

「いきなり話しかけられたから、
びっくりしちゃったかなぁ?
急に話しかけてごめんね。
俺、隣のC組の風間 好也(かざま こうや)。」

「いえいえ、気にしないでください。
好也さん、よろしくね。」

なぜか、郁は目の前にいる好也のことを避けたりすることなく、自然と話すことができた。こんなの初めてだった。

「よかったら、ライン交換しない?」

「あ、あの、私男の子のラインって、
持ってなくて…。」

「じゃあ!俺が第一号!だね!」

「え?…あ、はい(笑)いいですよ(笑)」

(楽しそうな人だなぁ。でも…。)