てのひら


5限目、郁は完全に夢の中にいた。
綺麗な寝顔を窓に向け、スヤスヤと。

すると、先生の怒鳴り声が聞こえた。
その瞬間、一気に目が覚めた。郁に怒っている。

「授業中に変な約束するな!」

「え!?待ってください何がですか!!」

「せんせー邪魔ーどいてー」

「…あ!!!!!」

そう、ライン相手は、郁が嫌いだと言った教科の時間にわざわざ花束を持って教室に来たのだ。

「私、受け取りません!」

「なんでだよー恥ずかしがってんの?」

「違います!」

「おいお前たち二人ともいい加減にしないと校長室連れていくぞ」

「だから!先生、私は何も悪くないです!」

《キーンコーンカーンコーン》

こうして国語の時間が終わった。
花束は相手がうるさかったので郁がお持ち帰りになった。

その日から、ラインは1日に20通以上来るようになり、帰りも気がつくと後ろにいたりと、ストーカーされているかのような日々が続いた。