ここは都内にある桜川高等学校

1年B組の教室で今日も
明るい男女の笑い声が響いている。

そんな一見普通の教室の窓側の一番後ろ、
風に揺らめくカーテンから溢れる日差しを
受けながら静かに本を読む一人の…美人な女の子が、

クラスで孤立していた。


別に周りに避けられているわけではない。
話しかければ笑顔で対応してくれる。

クラスの男の子も気にしている存在だった。

その女の子の名前は山下 郁(やました いく)。

周りには知られていないが、密かに独りで
郁は大きな深い悩みと毎日戦っていた。

男性恐怖症といって、名前そのまま。
つまり男の子が怖いのだ。
男の子が隣にいるだけで色々考えてしまう。
それも、かなりのネガティブ思考。

それは、年頃の女の子にはあまり見られない
とても珍しいものだった。
…正直に言うと、
それが原因で中学時代に色々とあった。

そういったことが重なってトラウマになり、
高校では人との関係を断ち切ることにした。

なのに…。

なのに、逢ってしまったのだ。

これほどにも純粋な、
とても心が優しくて…。
初めてだった。