「ねぇ、嘘じゃねぇんだって!」

「もう、しつこいって怒られるぞ、奏太。」


3人での帰り道。
未だにソータは騒いでいるが、まぁスルーをしよう。


「ほら、ここ、この神社!」

「見慣れたいつも通りの神社じゃん。大体、本当にいたらとっくに見てるっつーの。」

「でも、見たって噂があるんだよ、マジで。」

「あ...。」


私は立ち止まり、声をあげた。


「どうしたの?美依。」


有紀に聞かれ、私は2人の方を見てこう言った。


「今さ、狐の鳴き声が聞こえた気がしない...?」

「え...えぇっ!?マ、マジで!?」


ソータが怯えたような声で言う。


「え、嘘でしょ?美依。」


有紀は至って冷静だけど。


「...嘘だよ。」

「な、なんだよー...もう、ビックリさせんなよ、みよりん!」

「ったく、ビビリのくせに妖狐妖狐ってうるさいからちょっとからかってみただけー。大体狐の鳴き声って、どんなのよ、私聞いたことないしー。」


ソータに向かってべーっと舌を出すと、ソータは悔しそうに私を軽く睨む。
ソータはそういうのが苦手なくせに騒ぎ立てるのが好きだ。

昔から変わらなすぎる。
幼馴染の2人も、この村も。

妖狐がいるっていう噂だって、昔からある。
この神社だって、昔からある。

悪霊の一つや二つ、取り憑いたっておかしくはないのかもしれないけど、さすがに妖狐は無いだろう。
まず、その噂を流した人も、悪ふざけのつもりかただの狐を見てそう思い込んだだけだ。

そう、そんなもの、この村には、いや、この世界には、いない。