授業中は、眠くて眠くて仕方がなかった。
きっと今頃碧は、真面目に授業を受けているだろうけど、私は絶賛眠気と戦い中。
正直、先生の話は子守唄にしかならない。

チョンチョン、と横からつつかれているのを感じて、細目で横を見ると、シャーペンで私をつつくソータの姿が目に映った。


「あ、やっぱ寝てんじゃん、みよりん。」

「まだギリ寝てないー。」


と言いながらも目がほとんど開いていない私に、ソータは笑った。


「んじゃ、そんなみよりんに良いことを教えてあげよう!」

「んー?何ー?」

「じーつーはー...。」

「何よー。」


焦らすソータはすごく楽しそうだけど、早く教えてくれなきゃ寝ちゃいそうだ。



「この村には妖狐がいるんだよ!」


...ソータの自慢気な声色と笑みに、もういっそ寝てしまおうかと思った。


「...ソータ。」

「んー?」

「...その話さ、この村の人ならみんな知ってるし、大体信じてる人なんか今時いないよ?」


私のその言葉に、ソータはますます自慢気な表情になった。
なんなんだ...。


「そう言うと思ってたよ、みよりんちゃん!」


軽くイラつきながらも、頷きながら聞いてみる。


「本当にいるんだってさ、実際見た人いるらしいし。」

「ふーん。どこで?」

「...完全に興味なくなってるでしょ、みよりん。」

「うん。」


そりゃあそうだろう。
妖狐なんて、信じないし、オカルト系には興味ない。
小さい頃は信じて怖がったりとかしてたけどさ、さすがにこの歳にもなって信じるわけがない。


「...あのね、あのちっちゃい神社だってさ。」


この村に神社なんて一つしかない。
いつも通っている通学路の途中の、あの小さな神社。


「はい嘘だー。」

「嘘じゃねぇって!」

「こらうるせーぞ、如月。」

「...はーい。」


先生の注意によって、ソータの話は終わりを告げた。