夢なんて、見たことがない。
新しい景色に触れることもないから、夢となる材料がない。
眠っていても、起きていても、僕の前は真っ暗だ。

いつも、ただなんとなくここに座っていて、ただなんとなく息をして、生きている。
いや、生きていると言うのだろうか、僕の場合。

僕の世界は、狭い。

木の板で囲まれたこの暗い空間、その隙間から見える、外の僅かな景色と光、外から聞こえる子どもや老人、鳥や虫の声。

僕は自分の姿さえ見たことがない。
暗いこの空間じゃ、自分の色、明確な形すら分からない。

物心ついたときからここにいた。
だから今もここにいる、ただそれだけ。

ただそれだけの、僕の人生。
小説になんか出来ない。
内容が薄すぎて、語るのに1分もかからないくらい。

そんなつまらない僕の人生は、きっと、まだ終わらないんだろうな、と思う。