振り返るとそこにゆずの姿はなかった。
その代わりに目にしたのは、まるで急いで逃げ去るかのように走り出す黒いバンの車。
「ゆず…!!」
そういや、自販寄った時からいたなあの黒い車。
別に気にはしてなかったけど、ゆずの事狙ってたか、くそ。
頭で考えるより先に行動に出ていた俺は全速力で車を追った。
途中で見つけたタクシーを捕まえて急いで乗り込む。
「あの前の車追ってください!」
今のうちに兄貴たちに連絡しねーと。
ワンコールで電話に出た綾斗に俺は唐突に言った。
「兄ちゃんだけど。ちょっとまずい事になった。」
『何で?てか帰ってくるの遅いって優斗兄ちゃん言ってるよ。』
「それどころじゃねーんだよ!!
ゆずが拐(さら)われたんだよ!!」
『え…?!』
「だから、ゆずの事拐った車を追いかけてんの。」
無言になる綾斗。
何もいわねーって事はそっちも相当焦ってんな。
まじでヤバイ事になっちまった。
…そう言えば、
「綾斗、お前ならGPS使えるよな?
多分電話に出れねーからGPS使ってゆずの居場所二人で見つけろ。良いか?」
『良いよ。けど拓兄、ゆずちゃんに怪我でもあったらただじゃおかないよ?』
「分かってる。重々承知だ。」
「んじゃ。」と強制的に電話を切る。
ゆずの身に何か起きていたらどうしようか。
つい最近に、体育倉庫でのあの出来事があったばっかだ。ゆずも相当傷付いてる。
同じような事されるとは思いもしなかった。
俺が自販に寄らなければ、ゆずは拐われなかったかも知れない。
…そんな後悔はただ自分を焦らせるだけだった。



