いつだって笑顔で、お母さんは中本さんの帰りを待っていた。





「お母さんは別れてからも、中本さんを愛してたよ……っ。」





いつだって、どんなに苦しくても、お母さんは中本さんを信じてた。





お母さんが私と中本さんを会わせなかったのは、中本さんが嫌いとか、信じてないとか、そんな理由じゃない。





お母さんはただ、私に思い出してほしくなかっただけ。



お父さんがいない寂しさや、自分を轢いてしまったのがお父さんだっていうツラい現実を。





私が忘れたのは、赤坂村での出来事じゃなかった。



私が忘れたのは、中本さんに纏わる村での出来事。



山での記憶も、それに関係するから忘れたんだと思う。