一時期は、僕が亜希と最愛を守ろうと考えたりもした。
だけど父は容赦なく、僕の仕事場を潰してきたり、夜中に家の近くで大音量を流したり。
……しまいには、僕達の家を買い取ってしまった。
泣き崩れる亜希を目に、僕は会社の人形となることを決意するしかなかった。
それについて亜希には、何も話さなかった。
話せなかった。
衰弱してる亜希を目の前に、他の女の男になるなんて言えるはずがなかった。
それでも亜希は知ってたんじゃないかと。
鋭い亜希のことだから、知っててわざと知らないふりをしたのじゃないかと、今になってはそう思う。
「ぱ、ぱ……!」
家を出る前日、片言で話す最愛をいつも以上に可愛がった。
言葉にもやっと巧みが入り、これからの成長が楽しみというときに、この別れ。

