亜希は泣いていた。
わかっていたんだ、これは許されないことだと。
本来だったら僕も、ここで“おろせ”と言わなければならなかった。
それなのに、あのとき僕は……。
「……一緒に逃げよう、亜希。」
家族を捨て、亜希の手を取ってしまった。
最初こそ、苦しかった。
慣れない生活に、新しい仕事、妊婦の亜希への気遣い。
最愛が生まれてからは、育児にも手をつけた。
亜希だけに最愛を押し付けず、時には僕が、亜希に代わって面倒を見たりもした。
気づけば、そんな生活が日常に。
日常になってからは、本当に幸せだった。
そう。
僕は本当に、幸せだったんだ。

