「どこに行くの?」 中本さんの声が少し低くなった。 「……村に帰ります。」 「帰さないよ。」 ドアノブを掴んだところで、後ろからドアに勢いよく手が添えられた。 「……どうしてですか。」 「何がだい?」 「どうして、私とお母さんを置いていったのですか……?」 あれは夢だったのかも知れない。 死んだお母さんが出て来て、私に話しかけてくる……なんて、まるでおとぎ話の中の話。 それでも、私は思うんだ。 あれは紛れも無いお母さんの言葉だと。 何よりそれは、私の記憶が証明してる。