【完】狼様の最愛。









顔が無かった、ってのは少し間違い。





手も足も、体もある。



顔も、一応ある…………ただそこは黒い靄に包まれ、見えなくなっていた。





まるでそこだけが、異世界にでも取り残されたように。





「私に、何の用なの……!?」





服装からして、目の前にいる人が女性なことがわかった。





「……最愛……。」





そして私は、彼女の声を耳にして目を凝らす。





「おかあ、さん……?」





顔は靄に包まれて見えないのに、彼女がふと微笑んだ気がした。





「お母さん、なの……?」





もう一度、私は問う。



だんだんと後ろへ離れていく彼女。