何もすることがない私は、一度部屋に戻ることにした。 昔、お母さんが使っていた部屋。 大人が一人入れるくらいの、小さな押し入れがあるだけの狭い部屋。 壁や襖は傷や染みだらけで、決して綺麗とは言えない部屋だけど、窓から見える景色は絶景だった。 「……山が見える……。」 まるで出入口のように、大きい窓を開ける。 その先は、あの山だった。 手を伸ばせば、届くような距離。 無性に、懐かしい感じがした。 外からはお祖母ちゃんの笑い声が聞こえる。 考える間もなく、私は立ち上がった。