「ありがとうございました」


スペシャルなショートケーキを二つ買っていったカップルを見送る。

ああ、手なんか繋いじゃって。

素敵なクリスマスをどうぞ。

私は、そんな淡い願い事をした。


願ってなどいないこと……実はね。




「ああっ、もう!疲れた」

「なにそんな苛立ってるんだよ」


バイトを一通り終え、閉店時間になる。

人が居なくなったのを見計らい、独り言のつもりだった。


――先輩に聞かれていたらしい。



「まぁ、お前が苛立っても苛立ってるように見えねぇがな」

「どういう意味ですかっ?」



私は、キッと先輩を睨んだ。


口調の悪い、元ヤンみたいな人。

バイト当初はかなり怖かったけど、今はなんにも怖くない。