「説明しろ」




「何をよ。何も言うことないってば」




「何であそこにいた?」





それはこっちのセリフだよ。


なんて思いながら、黙り込む。


何でこんなにしつこいの。


今まで好きな人の話


しようとしても、


まともに聞かなかったくせに。


お前の話なんてどうでもいいって、


ずっと言ってたくせに。





「何?興味あるの?」




「興味あるないの問題じゃない」




「どうしたの、朝陽。何か変だよ」




笑って誤魔化すと、


朝陽は立ち上がりあたしに詰め寄る。





「泣いてただろ、お前」




「それは朝陽の勘違いだって」




「言えよ」





1歩近付く度に1歩引く。


何でそんなに気になるのか。


ジリジリ近付き、


あたしは壁に背が付いた。


もう逃げられる場所はなくて、


どうしようか困っていると。


朝陽があたしの行く手を阻むように、


壁に手を当て、距離を縮める。





「何、朝陽…」




「お前、好きな奴いんの?」





初めて聞かれた、朝陽からの言葉。


朝陽があたしの好きな人を


気にするなんて、何かある。


もしかして、朝陽も好きな人が


出来たとか。


それであたしに協力してほしくて、


だからわざわざこんな場所まで


連れて来たのかな。





「いるって言ったら何?」




「付き合ってんの?」




「付き合ってたら、とっくに言ってるよ」




あはは、と笑ってみせる。


何でこの距離なんだろう。


普通に向こうに立っててもいいのに。


話するくらいなら、


こんなに近くなくていいのに。






「何?本当、何?」





少しめんどくさくなって、


軽く朝陽の胸を押した。


何でこんなことされるの。


何がしたいの。


何が言いたいの。





「何なの?笑いたいの?あの時のあたしを見て、可哀想だと思ったわけ?」




「違う」




「じゃあ、何?」




そう突っかかるあたしに。


朝陽は優しく。





「俺、吉川が好きだから」





と言った。


あたしは何を言われたか分からなくて、


ただ地面を見つめた。


今、何て言った…?


朝陽が、あたしを、好き?





「え、好き…?」




「ずっと好きだった、お前のこと」





知らなかった。


そんな素振りも見せなかったし、


言われたこともない。


常にばかなことをして、


笑い合って。


ただそれだけだった。


そんな朝陽が、


あたしを、好きだと言っている。





「だから気になる。お前が傷付いたのかとか」





あたしの頭の中はパニック状態。


ずっと友だちだった相手。


そんなやつが、あたしの前で


男になっている。






「泣かされたなら許せないし、守りたいとも思う」





「まっ、待ってよ。そんな急に言われても…」




「ずっと言おうと思った。言わないでおこうとも思ってた」





朝陽が繋ぐ一言が、ひどく優しくて。


いつもの朝陽じゃないのは、


嫌でも分かった。