「今日の格好、可愛い」




「本当は違う服で来ようと思ったんだけど、雨降っちゃったから」




「似合ってる。すごく」





恥ずかしさを紛らすために、


カフェラテのストローを


口にしてみた。


だけどその仕草さえもを、


可愛いと言う悠太郎に


参りましたと降参。





「この後どうする?どこ行きたい?」




「んー、動物見たいなって」




「じゃあ動物園行く?」





動物が見たいだなんて、


朝見たテレビの影響のせい。


開運場所は動物園だって、


書いてあったから。


12位なんて気にしてないはずが、


開運場所に行きたいなんて。


気にしてますって、


いってるようなもんなんだけど。






「ごめん、ちょっと待ってて」




「あ、うん…」





突然震えた携帯に、


小さく"蓮哉"と呟いて


店の外に出て行った。


蓮哉から電話?


こんな休みの日に?


変な疑問が沸き出る中、


外で電話を耳にしている悠太郎の


表情は、少し曇っている。


嫌な予感がした。


あたしの勘は、大体当たる。


昔から、この子はあの子を好きだろうな


っていうことはほとんど当てて来たし。


今日は授業で当たりそうだなって時は、


かなりの確率で当たって来たし。


から揚げが食べたいなって時は、


大抵お母さんが作ってくれていた。


今、あたしは嫌な予感がしてる。


悠太郎が、どこかに行っちゃうんじゃ


ないかって。






「妃名子」




「あ、おかえり!」





あたしの悪い癖が前面に出てる。


悲しいのに、笑顔を見せる。


行かないでって言えたら、


どんなに楽かって。


いつもそう思う。






「ごめん、会社に行かないといけなくなった」





「…そうなんだ」






悠太郎に申し訳なさそうな顔を


させている。


なぜか、そのことの方が


申し訳なくなって。






「仕方ないよ!行って来て?」




「本当ごめん」




「帰って来る、よね?」





苦し紛れにそう聞いた問いかけに、


悠太郎は少し間を開けて笑って頷いた。


きっとこれは戻って来れない。


あたしの勘が、そう予想した。






「急いで行って来て!あたしは大丈夫だから」




「ちょっと行って来る」





ちょっと行って来るんだよね。


あたしは急いで店を出て行く悠太郎を、


笑顔で見送った。


相変わらず店内はいい香りが


広がっていて、その中にあたしはいる。


お待たせしました、と運ばれた


2つのオムライス。


少ししたら戻ってくるかもしれない。


そんなことを考え出したら、


オムライスに手が出せなくて。


携帯をぼーっと眺めて、


知らない間に時間だけが過ぎていった。