めぐりあい(仮)







「恵莉香さん、いい人だね」





美緒ちゃんも可愛いし。


そう言うと悠太郎は、


控え目に頷いた。


そして悠太郎は自分のイスに座り、


あたしはその近くに立って


窓ガラスの向こうを眺めた。


ここが、悠太郎がいつも、


見ている場所なんだね。






「あたし、恵莉香さんになりたいって本気で思っちゃった」





窓ガラスには、


物悲しげなあたしの顔が


うっすら映っている。


大丈夫。


ちゃんと言える。





「でも、なれるわけないよね」




「妃名子、待って」




「だってあたしはあたしだもんね」






現実を受け入れる。


そう決めたんだ。





「ね、悠太郎?」





鼻の奥がツーンと、痛む。


もうすぐ泣いちゃう。


それが分かるから。





「えへへ…」





一生懸命笑う。


心配しちゃう。


悪いのはあたし。





「もう終わりにしよう」





やっとそれを口にした時。


手が冷たくなった。


あたし、何言ってんだろうって。


正気か、って。


だけど決めた。


もう、本当に、決めたの。





「妃名子、待って」




「ごめん、勝手に決めちゃって」





まだ大丈夫。


あたし、笑えてる。






「悠太郎は、悠太郎の人生がある」




「俺の人生って何?俺は妃名子と…」




「悠太郎が大事にしなきゃいけないのは、あたしじゃないの」





あたしじゃないの。


恵莉香さんと、美緒ちゃん。


答えは明確。


それを迷わせているのは、


間違いなくあたし。






「妃名子は俺が嫌い?」






悠太郎はそんなことを、


寂しげに聞いて来る。


そんなわけ。


ないじゃない。






「うん。嫌いだよ」






嫌われたら、


終われるのかなって。


そう思い始めたら、


口が止まらなくなった。






「別に初めから好きじゃなかったし」





目が見れない。


顔が見れない。


どんなにいつも、


弱みを見せないあなたでも。





「何で一緒にいたんだろって、今でも思ってるし」





傷付きやすいことも、


悩んじゃう所も、


全部全部知ってるの。