「着ておきなさい」





千秋さんは自分のパーカーを


脱いで、鳴海に着せた。


他の男が見てるでしょ。


そう言って恥ずかしそうに


先にビーチに向かって行き。


少し嬉しそうに、


鳴海も後を追った。





「…何よ」





「別に?」





じーっとあたしを見つめる蓮哉。


あーそうですか。そうですか。





「ごっめんなさいね、鳴海みたいにセクシーじゃなくて」





頬を膨らましてそう言ってやる。


分かってるもん。


どうしても鳴海みたいに、


綺麗になれないもん。


勝手にいじけるあたしに。





「俺は白の方がいいと思うけど?」





少し意地悪な顔になる蓮哉。


そしてどんどん詰め寄って来て。





「脱がしていいなら、ここで脱がすけど?」





壁にトンと背中がついた時。


そんな冗談を言われ。





「なっ…、」




「ばーか」





真に受けそうになったあたしの


額を突き。


行くぞ、とビーチの方へ


歩いて行った。


あー、悔しい。


いい大人にもてあそばれた。





「ばかなのはどっちだよ」





この間からドキドキさせられて


ばかりのあたし。


少し腹を立たせながらも、


先に行く蓮哉の後を追った。






「鳴海、あたし疲れちゃった」





「浮いてるだけじゃん」





あまり泳げないあたしは、


浮き輪の中でしがみついてるだけ。


操作は鳴海が泳ぎながら、


やってくれていて。





「まだ休んでるのかな、あの2人」





「どうせビールでも飲んでんじゃないの?」





「でも蓮哉さん、運転じゃん」





そんなことを言いながら、


浜の方に目をやる。


浜には千秋さんが持ってきてくれた


パラソルが立てられていて。






「ね、あれ…」




「え?」




鳴海に指さされ、


パラソルの方を見ると。


座っている2人の前に。


綺麗そうな女性が2人


立っていた。






「ナンパされてる」




「何なの、あの女の人たち」





スタイルよさそうで、


栗色のロングヘアーの、


若そうな人と。


ショートで可愛めの人。





「ちょっとあたし行って来る」




「え、鳴海っ」





鳴海は結構沖にあたしを置いて、


浜の方に泳いで行った。


泳げないあたしは、


誰かが来てくれるまで、


ここから動けないわけで。