「何、何、お誘いだったの?」





「うん。鳴海、今日空いてる?」





待ってましたと言わんばかりに、


首を縦にぶんぶん振る鳴海。





「友だち連れて、ご飯行こうって」





「行く行く!是非!」





…ま、鳴海が嬉しそうなら


それでいっか。


それからルンルン気分の鳴海に、


色々突っ込まれて。


放課後まで、ぐったりしながら


何とか乗り切った。






「妃名子、あたし緊張して来ちゃった」





「本当に緊張する相手じゃないから」






待ち合わせの連絡が入り、


学校を出てそこへ向かう。


少し大人の雰囲気の和食屋さん。


牧瀬で予約してあると言われ、


受付で名乗ると、


畳の個室に入れられた。


あたし自身、


こんな所に来るのは初めてで、


そういう意味では少し緊張してるけど。





「ごゆっくりどうぞ」





お店の人の声が聞こえて来て、


障子に人影が写る。


同じような、背の高い人が2人。





「よ、高校生」





「よ、じゃないでしょ」





あー、疲れた。


と、スーツ姿の男2人が


部屋の中に入って来る。






「こいつ、俺の同僚で浅田 千秋」





「あたしの友だちで、伊藤 鳴海です」





あたしと蓮哉は、


お互いの連れを紹介し。





「牧瀬 蓮哉。よろしくね、鳴海ちゃん」





「あ、あたしは吉川 妃名子です」





あたしは千秋さんに向かって、


自己紹介を済ませる。


何、その蓮哉の顔。


あたしに対する笑顔と、


全然違うじゃない。






「何食いたい?」




はい、メニュー、と


蓮哉に手渡される。






「色々あるね」




「美味しそう」





鳴海と2人、


メニューを見ながら考える。


ちらっと向こうを覗くと、


もう決めているのか、


2人ともスーツのジャケットを


脱ぎ始めた。


スーツ大好きのあたしには、


結構たまらなかったり。






「あたしこれにする」





「じゃあ、あたしはこれ」






和食って難しいな。


なんて思いながら、


店員さんに注文をする。


男どもは、お決まりのビール。


あたしたちは、お茶。


まだまだ未成年なもんで。