「女を1人で帰らせる男は最低だから」





それだけ。


そう言う蓮哉は、


優しい人。


直感でそう思った。





「ありがとう」





家に帰る前に、


蓮哉はコンビニに寄って、


肉まんを買ってくれた。





「腹減ってんだろ」





「だってさっきこんな時間に、って」





「ぐだぐだ言うと俺が食うぞ」





「わー、ごめんなさい」





肉まんなんて、


久しぶりに食べたけど。


こんなに美味しかったっけ、って。


そう思った。






「あたしの家、ここ」





「結構会社から近いな」





「だから言ったじゃん」






そう言うと、


蓮哉は自分のポケットを


探り始め。





「俺の携帯鳴らして」





番号は、と早口で言われ、


待ってと慌てて携帯を出す。


数回コールを鳴らした後。






『もしもし』





電話に出たのは、悠太郎だった。






「あ、悠太郎…」




『妃名子?今どこに…』





悠太郎の言葉を最後まで


聞く前に、


蓮哉に携帯を取られた。






「やっぱ木嶋さんが持ってたんすか?」





蓮哉は、


言葉の間に謝罪の言葉を


交えていた。


きっと悠太郎が、


怒ってるんだろう。





「じゃ、今から取りに行きまーす」





電話を切った後、


怒ってた、と言いながら、


あたしに携帯を返した。






「怒ってたの?」




「結構な。珍しく」





頭を掻きながら、


めんどくせーと言葉を漏らす。






「じゃ、怒られて来るわ」





「蓮哉…」





怒られて来る、なんて。


そんなことしてほしくない。





「ごめんね」





思わず謝ると。





「またな」






そう言い残し、


蓮哉は帰って行った。


あたしは去る彼の姿を見て、


少し寂しいと思った。