「お疲れ様でした」
休憩室を出ようとした時、
すれ違った店長が。
「帰ったら早く寝ろ」
と言ってくれた。
結局、最低とか思っても、
いい人だな。
なんて思ったのに。
「眉間に皺寄って、すっげーぶさいく」
含み笑いであたしを見たから。
前言撤回。
誰がいい人なもんか。
「一生働いてろ、ばか店長」
そう毒を吐いて、お店を後にした。
外に出ると、生ぬるい風が
あたしを包み。
そして目の前に。
「妃名子、お疲れ」
悠太郎と。
「遅っせ」
失礼男、牧瀬が立っていた。
「待っててくれてたの?」
そう悠太郎に尋ねると。
「うん。もう終わる頃かなと思って」
「ったく、何時間待たせんだよ」
聞いてない人からも、
答えが返ってきた。
別にあなたに聞いてませんけど。
「行こうか」
悠太郎の一言であたしたちは
歩き出す。
なぜか右側に悠太郎で、
左側に牧瀬。
どうしてあたし、
この人たちに挟まれてるの。
なんて不思議に思いながら、
ゆっくり歩く。
「妃名子お腹空いてない?」
「あ、そうだな…」
「何、お前。こんな時間に飯食うの?」
「…何よ、悪い?」
助けてほしいのに、
悠太郎は楽しそうに笑っている。
そんなに、この男が
好きなのか。
男だけど、何だか嫉妬。
「別に?」
「本当むかつく」
牧瀬と言い合いをしていると。
誰かの携帯が鳴り。
「ちょっとごめん」
悠太郎が言った。
この言葉は、何度も聞いてきた。
「嫁だな、きっと」
「うん…、だね」
今、外にいるよ。
そう言っている悠太郎が、
心なしかこっちを
気にしているようで。
あたしと悠太郎の間では、
奥さんの電話は必ず出ること、
という約束がある。



