「綺麗だよ」
あたし、変なんだよ。
あたしのものに出来ないって、
分かってるくせに。
あなたが欲しいと思う。
あなたの傍にいた人たちに、
壊れるほど嫉妬してる。
あたし以外の女に触れないで。
話しかけないで。
笑いかけないで。
そんなこと考えてるんだよ?
って、そんなあたしの気持ち、
悠太郎が知ったら、
どう思うのかな。
それが怖くて、
あたしはずっとこのまま、
ここの場所で涙を流す。
狂おしいくらいに、
あなたを愛しているから。
「妃名子、辛くない?」
「ん、大丈夫…」
悠太郎の腕枕で横になる。
ゆっくり撫でてくれる、
髪に触れる手が心地いい。
「悠太郎、最近忙しいの?」
「うん。相変わらず休みなし」
「大変だね。優秀な人は」
悠太郎にしてあげられることは、
どんなことがあるかな、って。
考えても考えても、
追いつかない。
「休むことも必要だよ?」
「妃名子といると休まる」
ありがとう、と。
そう言って、彼はあたしの
額にキスをした。
ありがとう、なんて。
あたしが言う言葉なのに。
いつも一緒にいてくれてありがとう。
あたしを愛してると言ってくれて、
ありがとう。
傍にいさせてくれてありがとう。
言い足りないくらいのありがとうが、
悠太郎にはあるよ。
いつか伝えられるのかな。
いつか、いつか…。
いつか、ばいばいする時が、
くるのかな。
「あたし、そろそろ帰らないと」
「送ってく」
「悠太郎、今日はいいよ」
1人でベッドを出ようとすると、
悠太郎の手によって
再び引き戻されて。
「そんなこと言うなら帰さない」
「でも、休んでほしっ…」
「1人で帰ってる妃名子のこと考えてるだけで、休めないから」
察して、と言う悠太郎の顔が、
少し悲しそうだったから。
ごめんね、と言うことにした。
こんなにも優しい彼は、
やっぱりあたしのものではない。



