めぐりあい(仮)









「このまま連れて帰るぞ。いいんだな?」





蓮哉のその言葉を聞いて。


千秋さんは吹っ切れたように、


鳴海の名を呼んで。





「…ごめんっ」





駆け寄って、小さな彼女を、


大きな体で抱きしめた。


今、あたしの隣で、


1つ幸せが繋がった。






「千秋…っ、」




「ごめん、鳴海。ごめん」





何も済んでない。


だけどとりあえずこれでよかったんだ。


よかったんだよね。





「帰るぞ、妃名」




「うん」





お邪魔なあたしたちは、


こっそりその場を離れた。


車の鍵を蓮哉に渡すと、


エンジンをかけ、


あっさりホテルを離れることに。





「上手くいくかな」




「いくだろ」




「鳴海、ちゃんと正直になるといいけど」





2人で車に乗りながら、


ずっと鳴海と千秋さんの


話でいっぱい。







「もしもし」




『ごめん、今大丈夫?』





蓮哉の家に着いてすぐ、


鳴海から電話が入った。





「うん、平気だよ」




『今2人で外にいるの』





落ち着いた声で、


はっきりと話す鳴海。





『あの後すぐ千秋とホテル出たから、状況はまだ何も変わってない』




「そうなんだ…」




『でも2人で話して、ちゃんと付き合うことになったから』






その報告を聞いて、


笑顔になるあたし。


その様子を見て、


蓮哉はやれやれと呟いた。






「おめでとう」




『本当迷惑かけてごめんね』





いつもとは違う、


少し弱気な鳴海が


すごく可愛く感じる。


恋、してるんだな。





「何言ってんの、迷惑じゃないから」




『蓮哉さんにもお礼言っといて』




「分かった、伝えとく」





また連絡する。


そう言って電話を切った。





「収まったか」




「うん。2人でホテル抜けたみたい」




きっと蓮哉も喜んでると思う。


だって大事な友だちが、


幸せに近付いてるんだから。





「鳴海がありがとうだって」




「水臭いこと言うなって伝えとけ」





鳴海の幸せが、


ちゃんと形になりますように。


ずっと笑っていられますように。


一緒に、歩んで行けますように。