「高校生?」




「え?」




唐突に聞かれ、


意味も分からないまま


こくりと頷くと。





「こんな所でおじさん待ってないで、家帰って勉強でもしたら?」






意地の悪い笑みを浮かべ、


あたしを見るこの失礼男。





「ちょっと、何なの?」





こっちが親切に拾ってあげたのに、


何でそんなこと言われなきゃ


いけないわけ?


しかもその笑いは何?


ふつふつと沸く、怒り。





「別に関係ないじゃ…」





「名前、何てーの?」





何が言いたいの。


何がしたいの。


訳も分からず、


ばかなあたしは。






「吉川 妃名子ですけど」





見ず知らずの人に、


名前を名乗ってしまう。






「ふーん」





何、そのふーんって。


どこまで失礼なの、この男。






「ありがとな、妃名」





失礼男は、拾ってあげた資料で、


無造作にあたしの頭に触れ、


自分の名も名乗らず、


中に入って行った。


何であいつは、あんなに


偉そうなの?


何で親切にしてあげたあたしが


こんな思いしなきゃいけないの。


本当、むかつく。


そんなことを考えていると。





「妃名子?」





後ろから足音が聞こえ、


振り向くと。






「ここにいたの?」





息を切らして走って来てくれた


悠太郎がいて。


せっかく驚かそうと思ったのに、


計画があの男のせいで、


無駄になった。






「ごめん、待たせて」





「ううん。平気だよ」





行くか、と。


先を歩く悠太郎の後ろを、


待ってと追いかける。


公では繋げない寂しい手を


必死に振って。