12月も下旬にさしかかり。


あたしのお腹から赤ちゃんが


いなくなってから、


2週間が経とうとしていた。


学校はもうすぐ冬休みということで、


自主休学している。


バイトも年明けまで、


無理を言ってお休みをもらった。


店長は、


「戻ってきたら覚悟しとけよ」


なんて言って、事情も聞かず、


察してくれた。


赤ちゃんがいないことを、


未だに全部を受け入れられず。


ふと思い出しては、


1人で悲しんだ。


涙を流しては、


あの日のことを思い出す。


大丈夫。また会える。


そう思っては、悲しんで、


の繰り返し。





「じゃあ、お母さん仕事行くわね」




「うん、気を付けて」




「早めに帰れるようにするから」





バタバタとせわしなく、


お母さんは家を出て行った。


家にいても特にすることはなく、


片付けをしたり、テレビを見たり。


1日ずっと、ぼーっとしている


ばかりだった。


蓮哉とはほぼ毎日会っていて、


気を遣って会社帰りに顔を


出してくれる。


鳴らない携帯を見つめながら、


鳴海元気かな、とか、


朝陽寝てないかな、とか、


そんなことを考えていると。


急に着信音が鳴って、


肩をびくつかせた。


表示された名前は、


思っても見なかった、蓮哉の名前。






「もしもし…?」




『着替えろ』





もう9時を回っていて、


蓮哉は仕事中のはず。





「え、着替えろって…」




『海、行くぞ』




「は…海?何で?」




『いいから』






分かった、と電話を切ると、


あたしは急いで支度した。


部屋から出て、身支度を済ませ、


もう1度携帯を見ると、


電話を切ってから3分後に、


もう外にいるとメールが入っていた。






「ごめん…っ、待った?」




「遅え」





日差しが良い今日、


車を運転する人には眩しいのか、


蓮哉は愛用のサングラスを


かけている。





「どこ行くの」




「海だっつったろ」




「言ったけど…12月だよ?」




「うるせえ。行くぞ」





訳が分かんない蓮哉に、


あたしの頭の中は


ちんぷんかんぷんで。


まだ理解していないけど、


もう言う言葉もなくて、


黙り込むことに。





「どうせ暇だったろ?」




「暇だったけど。蓮哉、仕事は?」




「休めって言われた」




有給休暇ってやつ。


そう言いながら、


少し笑ってあたしを見た。


社会人って得だな。


休んでも給料出るんだもんな。






「飯食った?」




「少しだけ」




「じゃあ俺に付き合え」






少し車を走らせた後。


道路沿いにある定食屋さんに


車を停めた。