「お前、太ったんじゃね?」
「ねー、朝陽。あんた、最低」
お昼休み。
久しぶりに、と言っても、
休み明けにも会ったけど。
「お待たせ」
「あー、ありがとう」
屋上で、鳴海と朝陽と3人で、
お昼ご飯を食べることに。
「伊藤、どうなってんの?」
「何が?」
「あの年上の…何て名前だっけ」
「千秋さん?」
「そう、それ」
そういえば、そうだ。
ずっと聞いてなかったけど、
鳴海と千秋さんはどうなってるんだろう。
「別にまだ何にもない」
「嘘だろ。だって遊びに行ったりしてんだろ?」
「うん、してる」
あたしから見て、
お似合いの2人だと思うんだけどな。
「でもね、初めよりは進展してる」
あたしのことも名前で呼ぶし、
歩きながら手も繋ぐよ。
そう嬉しそうに言いながらも、
だけどそれ以上はなくて、
正直不安だと本音を漏らす。
「でも文化祭の時、彼女って言ってたよね?」
「…確かに」
千秋さんって、
本当何考えてるか分かんないな。
「吉川、電話鳴ってるぞ」
授業が終わってから、
バイブのままの携帯。
朝陽が見つけると、
言われるがままに携帯を
手に取る。
ディスプレイには、
知らない番号。
「誰だろう」
「知らない番号?」
「そうなの」
中学の時の友だちかな?
でも番号ってわざわざ変えるかな?
出ないでおこうか迷ったけど。
「…もしもし」
恐る恐る通話ボタンを押す。
耳に聞こえたその声は。
『いきなり電話してごめんなさい』
「…あの、どちら様…」
『恵莉香です。お久しぶりね、妃名子さん』
悠太郎の奥さん。
恵莉香さん。
「あ、え…恵莉香さん?」
『今、もしかしたらお昼の時間かしら?』
「そうです、けど」
恵莉香さん、と口にした瞬間、
鳴海と朝陽があたしを見る。
少なくとも鳴海は、
会ったことあるわけで。
恵莉香さんが誰かは、
知っているわけで。
『学校終わったら、連絡いただけるかしら?』
「終わったら…ですか?」
『ごめんなさいね。お時間、下さいな』
どうしてあたしが、
恵莉香さんと会うんだろう。
何の目的で、
あたしに電話をかけたのだろう。



