着くなり、


運ばれてきたお冷を


一気に飲み干す。





「何で朝陽があそこにいたの?」




「怪しかったから後を付けた」




「は?ストーカーじゃん」





どうせそんなことだろうと


思った。


どう考えても、


朝陽があそこを通るのは、


おかしいもん。





「それより、誰の子どもなんだよ」




「あたしの子どもだよ」




「じゃなくて、相手。誰だよ」




「言っても分かんないでしょ?」





朝陽は真剣にあたしを見る。


いつもの朝陽じゃなくて、


何だか可笑しい。





「俺が父親になってやるよ」




「は?いや、いいよ」




「1人で育てるつもりなんだろ?だったら、俺が…」




「朝陽なんてお断りだよ。頼りにならないもん」





笑って見せると、


怒りながらも少しホッと


した表情を見せる朝陽。






「じゃあ…聞いてもらおうかな」





あたしは本人の了承を待たず、


話すことにした。


悠太郎と出会ってから、


今日までのこと。


悠太郎を愛して、愛されて。


だけど不倫をしていて。


悠太郎を愛していたはずが、


いつの間にか蓮哉を好きになってて。


悠太郎に別れを告げたこと、


妊娠が分かったこと。





「これがあたしの全て」





満足ですか?


冗談っぽくそう聞くと、


朝陽は。





「頑張ったな、吉川」




「え…?」





今にも泣きそうな顔で


あたしを真剣に見つめた。


頑張ったな、なんて、


言ってくれるなんて。





「頑張ってなんかない。不倫だよ?人の家庭、壊す所だったんだよ?散々好き放題やって、妊娠までして、挙句の果てに他の人を好きに…」





「だからって吉川も辛かっただろ?1人で色々耐えて来たんだろ?」





お腹に手を当てながら、


朝陽の言葉を受け止める。


そう。


辛かったの。


色々あったけど、


頑張って耐えて来たの。





「俺、お前のこと見直した」




「でしょ?もっと見直していいよ」




「うるせーよ、お前」





やっぱり朝陽だな。


あたしの1番の男友だち。


言うつもりじゃなかったことも、


全部言えちゃう。


大切な、大切な、友だち。






「不倫の男とは終わったとして、もう1人の人はどうなってんだよ」




「会えてないし連絡も取れてない」




「何で?」




「分かんない。全然分かんないの」





蓮哉が今どこで何をしてるのか、


全く分からないの。


会いたい。


傍にいたい。


だけどそれらは、叶わない。





「そんな男やめとけよ…」




「朝陽?」





すると朝陽は突然立ち上がり、


通路に立ち。





「俺ならお前を悲しませない。幸せにする。絶対守ってみせる。だから…」




「朝陽…あのね、」




「考えとけ。絶対本気で考えろ。いいな?絶対だぞ」





圧倒される。


いい加減なことが言えなかった。


いつになく朝陽が、


すごくすごく真剣だから。





「気を付けて帰れ」





朝陽はそう言うと、


ファミレスを出て行った。


ガラスの向こうを勢いよく


駆けていく朝陽を見て。






「ありがとう」





思わず顔が綻んだ。


いいやつだな、本当。


何であたしなんかのために、


あんなに真剣になってくれるんだよ。





「でも、ごめんね…」





嬉しいけど、でも。


朝陽はあたしの、


永遠の親友だよ。


それ以上でも、それ以下でもない。


大切な、親友だよ。