【2-B 瀬名杏】


というあたしの名前が広がったのか、休み時間や昼休みになると、遥斗の彼女であるあたしの顔を一目見ようと大勢の女子が廊下に集まって教室を覗き込む。


「ねぇ、どれ。どの人?」


「あの黒髪ロングの人じゃない?」


「えー、あの人美人じゃん。あたしが聞いた話だと、本当に平凡な顔らしいよ?」


「そうなの?じゃあ、机に伏せてるあの人?」


し、失礼な。平凡な顔で悪かったわね!!


心の中で悪態を吐く。


「涼子ぉぉ……あたし、顔あげられないんだけど……」


「杏ってば、もっと自分に自信持ちなよ。あの遥斗君が杏のことを彼女に選んでくれたんだから。名誉なことじゃない」


「それはそうだけどさぁ……」


とにかく、毎日のように廊下から上級生下級生とわず「平凡」だとか「普通」だとか言われて嫌気がさしていた。