「杏ちゃんも俺のことカッコいいって思ってくれる?」


「はい」


「そっか。嬉しいな」


おんぶされているから、先輩の顔は見えない。


だけど、声のトーンで先輩がどんな表情をしているか想像できる。


「ていうかさ、こんな時に言うのもあれだけど……」


「はい?」


「俺、前から杏ちゃんのこと知ってたんだよね」


「え……?」


「廊下とかですれ違うたびに可愛いなって思ってて。今、こうやってしゃべれて嬉しい」


廊下ですれ違うたびに……可愛いなって?


あたしとしゃべれて嬉しい?


嘘でしょ……。まさか……――そんな。