すれ違うときはほんの一瞬だけど、持久走大会の練習はそうではない。


先輩は友達とおしゃべりしながらダラダラと走っていることが多い。


スポーツがからっきしダメなあたしもいつも最後尾に位置している。


去年は先輩のすぐ後ろをキープしながら走った。


先輩が足を緩めたら自分も緩めて、少しスピードを上げたら自分もあげて。


追いかけていることがバレないように一定の距離をあけながら走るあたしはさながらストーカーのようだった。


でも、先輩の後ろ姿をずっと眺めていられて幸せだった。


友達と笑い合う先輩の横顔に、自分の顔までにやけてしまいそうだった。


だけど、今年は先輩の後ろについていこうと思わない……。