「はは、わかってるって。今日はもう行くつもりなかっただろ?
でも気にする必要なんかないよ?時任さんが皆に言ってくれたから」

「……え?」


目をぱちぱちとさせる小早川は、俺の顔をまじまじと見つめる。
真意を問いただす様に。



「時任さんはずっと気にしてたみたいだよ」

「……」

「追い出す様な事はしないでって皆に頭下げてた」

「……何、それ」


小早川は布団をぎゅうっと握り締める。
強く掴まれた箇所はいくつもの皺を刻んで行く。



「何があったのか、そろそろ聞いてもいいかな」

「……」

「俺は小早川の口から聞きたい。
他の人に聞く事も出来るけど、それじゃきっと食い違う事もあるだろうし」

「……いいですよ」

「え?」


まさか、小早川がOKしてくれると思わなくて、素っ頓狂な声が出た。
驚いて小早川を見つめるが、こっちを見る事はない。


まだ、布団に皺は刻まれたまま。



「別に隠す事でもないし」

「……」



小早川は自嘲する様に笑うと、話し出した。


「私ね、付き合ってた彼と無理心中したんだ」