といっても見世物小屋から馬車で連れてこられてそのまま貴婦人の屋敷に置き去りにされてからまだ、ルビーはほかの使用人に紹介してもらっていない。
 貴婦人に連れられて3階建ての大きなお屋敷をぐるりと一通り案内してもらったあと、2階のホールのわきにある金属製の取っ手のついた豪奢なデザインの扉を開けて、そのまま貴婦人の部屋でお茶となった。
 使用人は熱い湯と茶葉とお菓子を持ってきたあとすぐに下がり、二人きりにされてしまったのだ。

 テーブルに案内してくれた使用人が部屋から退出するやいなや、待ち切れずにルビーは口を開いた。

「教えてください、奥さま。どうしてこんなお取り引きをなさったんですか?」

 座長と貴婦人がやりとりしているときも、契約の書類が取り交わされている間も、長い廊下を歩いて大きな階段を上って下りて広いお屋敷を案内してもらいながらも、ずっと聞きたくて仕方のなかった質問だった。

「まあお座りなさいな。いま、お茶の準備をしますから。お話はお菓子をいただきながらゆっくりとね」
 貴婦人は微笑して、椅子に座って待つようにルビーに言った。

 そうして、ルビーにとって、とても長くてとても気疲れするお茶会が始まったのだった。