「見世物小屋で呼び込みや大道具など裏方の仕事をしているものたちは、住み込みで基本ただ働き同然だ。額面上の給料は存在しても宿代やら食事代やらと称して天引きされるから何も残らない。まして奴隷に支払う給料などないというわけだ。だからここにいる限り、何年働こうが大きな舞台で大トリを努めようが、自由の身になる日はいつまでたっても来ない」

「だから、簡単に言うとね」
 今まで黙っていたブランコ乗りが、最後に短く話をまとめる。
「きみがここから逃げ出すなら、登録されてないか登録が不完全な今のうちだってことだよ」