「形状が変化したことについては、ひとまずここでは置いてくれ。ではそれは登録のためにつけられたものじゃないってことだな。念のため、もうひとつ聞くが、身体のどこかに直接番号が彫られてるとかいうことはないよな?」

「直接彫るって、どうやって?」
「おもにタトゥーと焼印だね。どっちのやり方が取られるかは、半分半分ぐらいじゃないかな」
 そう答えたのは舞姫だった。
 ナイフ投げは頷き、説明を添える。

「タトゥーの場合は国の頭文字、市の頭文字、それに4ケタの数字の合わせて六文字が刻まれる。焼印の場合は省略されて、頭文字は登録する市のものだけで、数字は下2ケタだけになる。登記庁に登録に行くときに戸籍と照合するか、戸籍がない場合でも、身長や目や髪の色や年齢などの特徴を一緒に登録するから、省略されていても、これまで問題が起こったという話は聞かない」

 少し困ってルビーは目の前の3人を見回した。
 タトゥー。焼印。登記庁。戸籍。
 ナイフ投げの説明は聞きなれない言葉のオンパレードで、何をどこからどう質問していいのかわからなくなってしまったからだ。
 仕方がないので、少し考えてルビーはこう答えた。

「たぶん、ないと思う。知らないうちに、その番号?をどこかにつけられてるんじゃなかったら」
「知らないうちにってのは無理だよ」
 舞姫は笑った。
「どっちもすごく痛いから」

「認識番号は通常右の肩につけられる」
 言いながらナイフ投げは自分の服の、右肩部分をめくって見せた。
 浅黒い皮膚の一部が、焼け焦げて変色した三つの文字の形に窪んでいるのが見て取れた。遠目にはわからないその小さな傷痕は、見事に鍛えられた背筋から肩にかけての筋肉の完璧な造形美を損なっているようにも思えた。
 ナイフ投げは言い添えた。
「これは焼印によるものだが」

「で、こっちはタトゥー。あたしのはただの趣味で、認識番号じゃないけどね」
 舞姫は自分の髪をかきあげて、左の耳の後ろ側に刻まれた彫りものの絵をルビーに見せた。小さな青い鳥が、耳の後ろで真っ青な羽根を広げていた。
「人魚はタトゥーも知らないのかい? 噂だけど北の国の人たちにもタトゥーを入れる習慣があるって聞いたことあるけどさ」
 やっぱりルビーはかぶりを振ることしかできない。

「ここにもあるけど───」