ブランコ乗りの手がルビーに触れた途端、水とルビーを隔てていた膜が不意に破れ、冷たい水が肺の中に流れ込んできた。ちょうど水を大きく吸い込んだタイミングで強引に引き上げられたせいで、床に降ろされたルビーは、身を折って激しく咳き込み、肺の中から水を吐きだした。
ブランコ乗りは、水を吐くルビーの背中を叩いていたが、顔を上げて、怒り狂ってわめき散らす座長に向かって言い返した。
「見世物になればいいんでしょう。彼女をぼくのパートナーに育てます」
一瞬座長はあっけにとられた顔になり、それから首を振った。
「パートナーって、今から技を仕込むには育ち過ぎてるんじゃないか、その娘は」
「やってみなければわからないでしょう。見たところこの子はまだ育ち切っていない。女と子どもの中間ぐらいに見えますから、十分間に合うとぼくは思います。それに、ここで水におぼれて死ぬのも、あとで軽業の練習に失敗して落下死するのも、死ぬことに変わりはない」
「しかし、おまえさんはパートナーを事故で亡くしてから、もう相方は要らないといって、ずっと一人でやってきたんじゃなかったのか?」
さっきまで怒りで赤黒くなっていた座長は、ブランコ乗りの言葉でちょっと冷静になったらしく、考え込む顔になる。
「それに、どうせ新しく空中ブランコのパートナーを組むなら男か少年がいいと、わしは思う。おまえさんは女性客に人気がある。今さら女をパートナーにして、いたずらにほかの女たちを刺激することになるのはどうかと思うんだが」
「男と組むのは技が美しくならないからごめんですよ」
ブランコ乗りはようやく咳き込みから解放された様子のルビーが立ち上がろうとするのを助けようと手を伸ばした。
「大丈夫かい? 赤毛ちゃん」
「人魚よ」
そっけなく、ルビーはブランコ乗りの手を振り払った。
「赤毛ちゃんと呼ばないで」
「きみはもう人魚じゃない」
「人魚じゃないなら、元人魚でもいいわ。とにかく赤毛ちゃんと呼ぶのはやめて」
「ねえ」
舞姫が、一歩前に出てきた。
「だったら座長、人魚をあたしにあずけなよ。一人前の踊り子に仕込んでやるよ」
「しかしなあ」
座長はなおも納得いかないといった顔で腕組みをする。
ブランコ乗りは、水を吐くルビーの背中を叩いていたが、顔を上げて、怒り狂ってわめき散らす座長に向かって言い返した。
「見世物になればいいんでしょう。彼女をぼくのパートナーに育てます」
一瞬座長はあっけにとられた顔になり、それから首を振った。
「パートナーって、今から技を仕込むには育ち過ぎてるんじゃないか、その娘は」
「やってみなければわからないでしょう。見たところこの子はまだ育ち切っていない。女と子どもの中間ぐらいに見えますから、十分間に合うとぼくは思います。それに、ここで水におぼれて死ぬのも、あとで軽業の練習に失敗して落下死するのも、死ぬことに変わりはない」
「しかし、おまえさんはパートナーを事故で亡くしてから、もう相方は要らないといって、ずっと一人でやってきたんじゃなかったのか?」
さっきまで怒りで赤黒くなっていた座長は、ブランコ乗りの言葉でちょっと冷静になったらしく、考え込む顔になる。
「それに、どうせ新しく空中ブランコのパートナーを組むなら男か少年がいいと、わしは思う。おまえさんは女性客に人気がある。今さら女をパートナーにして、いたずらにほかの女たちを刺激することになるのはどうかと思うんだが」
「男と組むのは技が美しくならないからごめんですよ」
ブランコ乗りはようやく咳き込みから解放された様子のルビーが立ち上がろうとするのを助けようと手を伸ばした。
「大丈夫かい? 赤毛ちゃん」
「人魚よ」
そっけなく、ルビーはブランコ乗りの手を振り払った。
「赤毛ちゃんと呼ばないで」
「きみはもう人魚じゃない」
「人魚じゃないなら、元人魚でもいいわ。とにかく赤毛ちゃんと呼ぶのはやめて」
「ねえ」
舞姫が、一歩前に出てきた。
「だったら座長、人魚をあたしにあずけなよ。一人前の踊り子に仕込んでやるよ」
「しかしなあ」
座長はなおも納得いかないといった顔で腕組みをする。

