青年は顔を上げた。戸惑ったようにルビーを見返す、そのまなざしが揺れる。
 が、彼はすぐにまた目を伏せ、口元に物柔らかな笑みを浮かべた。
「まさか。彼女は顧客だよ」
「だって」
 ルビーは身を乗り出すようにして、言い募った。
「あなたの言葉があたしには、あの方を悲しませないでくれって言ってるように聞こえるんだもの。たやすく力に屈して言いなりになったら彼女が悲しむから、そういう風にはならないでくれって」
 ルビーの言葉にブランコ乗りは、そうだとも違うとも答えなかった。