貴婦人の三つの答えには多分、ちょっとずつの真実が含まれているのだと思う。真実とそうでない部分の比率についてはルビーにはわからなかったが、少なくとも執事とのいまのやり取りで、きょうブランコ乗りをここに呼んでいることだけは、本当のことなのだと知った。
 貴婦人を退屈させれば、彼女はルビーを餌に、ブランコ乗りを好きなときに呼びつけようとするかもしれない。また、ナイフ投げや舞姫についても、彼らが自分を気にかけてくれていることを貴婦人が知れば、同じように考えるかもしれなかった。
 ルビーが賭けに乗る方が、貴婦人は状況をスリリングだと思ってくれそうな気がした。1000曲覚えるのは容易なことではないだろう。けれども貴婦人の提示した猶予期間は100日ではなく150日だ。ルビーの勝算をつぶすつもりで持ち出した条件ではない気がした。
「では、いいのね、ロビン」
 ルビーの目に明確な意思を読み取って、貴婦人は微笑んだ。
「それとね。さっきのあなたの質問に対して、まだ四つめの答えが残っているのよ。でもいまはお客さまがお見えだから、アンクレットの話と合わせて、またのちほどね」
 貴婦人は部屋に戻ると、ベールのついた黒い帽子をかぶり直した。それから黒いレースの手袋を両手に嵌め、部屋を出て行った。
 取り残されたルビーはもう一度テラスに出て、大きな黄色い花の咲いている中庭を眺めおろした。