ルビーの疑問に、貴婦人はすぐに答えをくれた。
「もちろんこの思いつきがあなたの気に入らなければ、なしにしましょう。歌はゆっくりと少しずつ覚えればいいわ。お給料は最初にお話ししたように1日につき10エキュー出しましょう。10エキューを全部貯金にあてることはできないと思いますから、実際には4年以上かかるでしょうけど、いずれは自由を手に入れることもできるでしょう。あなたと、見世物小屋の人たちがそれまで待てればの話ですけれどもね。
それから、あなたに名前をつけなければね。人魚でないのにいつまでも人魚、ではおかしいわ」
「奥さま──」
話が長くなりそうだと感じたのか、それまで黙っていた執事が口を開いた。
「急なお客さまがお見えです」
執事の言葉に、貴婦人はいぶかしげに眉を上げた。
「どなた? ブランコ乗りではないの?」
「いえ、見世物小屋のものではなく」
執事は一度言葉を切って、貴婦人を見た。
「カルロ・セルヴィーニ様が」
「まあ、首相が?」
貴婦人は首を傾げた。
「何のご用かしら。それにしても、本当にあの方は前触れもなく突然いらっしゃるのね。いいわ。客間にお通ししてくれる? それとお茶をお出ししてね」
「客間には既にご案内いたしております。ただいまお茶も用意させていただいておりますので、ほどなく準備が整うかと。のちほど奥さまもお越しください」
執事はもう一度、お辞儀をして、屋敷の中に戻っていった。
貴婦人は振り返ってルビーを見た。
「いい名前があるの。これからはロビン(※コマドリの意味)と名乗るといいわ。小さくて歌声が綺麗で、頭の部分が炎のように濃いオレンジ色をした可憐な鳥なのよ。今度図鑑を見せてあげるわね」
貴婦人の柔らかな声で最初にその名前を呼ばれたとき、ルビーはぎくりとした。ロビンという言葉の響きが、ルビーと非常によく似ていたためだ。
しかしルビーはすぐさま、はい、と頷いた。
「歌のこと、考えておいてね、ロビン」
「あの、それでしたら、お受けします」
ルビーが即答したので、貴婦人は目を丸くした。
「いいの? 考える時間はあるのよ?」
「お受けするのが正解だと思います」
さっき貴婦人が出した三つの答えについて順番に思いを巡らせながら、ルビーはそう答えた。
「もちろんこの思いつきがあなたの気に入らなければ、なしにしましょう。歌はゆっくりと少しずつ覚えればいいわ。お給料は最初にお話ししたように1日につき10エキュー出しましょう。10エキューを全部貯金にあてることはできないと思いますから、実際には4年以上かかるでしょうけど、いずれは自由を手に入れることもできるでしょう。あなたと、見世物小屋の人たちがそれまで待てればの話ですけれどもね。
それから、あなたに名前をつけなければね。人魚でないのにいつまでも人魚、ではおかしいわ」
「奥さま──」
話が長くなりそうだと感じたのか、それまで黙っていた執事が口を開いた。
「急なお客さまがお見えです」
執事の言葉に、貴婦人はいぶかしげに眉を上げた。
「どなた? ブランコ乗りではないの?」
「いえ、見世物小屋のものではなく」
執事は一度言葉を切って、貴婦人を見た。
「カルロ・セルヴィーニ様が」
「まあ、首相が?」
貴婦人は首を傾げた。
「何のご用かしら。それにしても、本当にあの方は前触れもなく突然いらっしゃるのね。いいわ。客間にお通ししてくれる? それとお茶をお出ししてね」
「客間には既にご案内いたしております。ただいまお茶も用意させていただいておりますので、ほどなく準備が整うかと。のちほど奥さまもお越しください」
執事はもう一度、お辞儀をして、屋敷の中に戻っていった。
貴婦人は振り返ってルビーを見た。
「いい名前があるの。これからはロビン(※コマドリの意味)と名乗るといいわ。小さくて歌声が綺麗で、頭の部分が炎のように濃いオレンジ色をした可憐な鳥なのよ。今度図鑑を見せてあげるわね」
貴婦人の柔らかな声で最初にその名前を呼ばれたとき、ルビーはぎくりとした。ロビンという言葉の響きが、ルビーと非常によく似ていたためだ。
しかしルビーはすぐさま、はい、と頷いた。
「歌のこと、考えておいてね、ロビン」
「あの、それでしたら、お受けします」
ルビーが即答したので、貴婦人は目を丸くした。
「いいの? 考える時間はあるのよ?」
「お受けするのが正解だと思います」
さっき貴婦人が出した三つの答えについて順番に思いを巡らせながら、ルビーはそう答えた。

