「ふぁー!きれい!」

「だろう?此処は僕しか知らない秘密の場所なんだよ」

この広い花畑はきっと四季折々色々な花を咲かせこの少年を飽かした事などないのだろう。

「ふふっ♪二人だけのひみつの場所になったね」

「そうだね、今の季節ならパンジーや水仙なんかもきれいだよ」


キャッキャッとはしゃぐ少女を見ながら少年は小さな花で指輪を作っていました。



「……出来た」

その小さな声に少女は気づき少年の元へ走ってきました。

「どぉしたの?」

「これをあげるね」

差し出された小さな花の指輪に目を輝かせながら少女は問いました。

「これなぁに?」

「……もし、君が僕を好きでいてくれるのならばこれを持っていてくれ。
必ず迎えに行くから」

その真剣な眼差しに安易に頷いてはいけないものだと気付くが少女は少年が好きでした。
未だ友愛と恋情の区別もつかない少女でしたが、このふわふわとした甘くて暖かい感情に別れを告げるのは惜しく感じ少女は少年を好きだと言いました。

「もし、もしも君が途中で僕を嫌いになってしまったら捨てて貰って構わないよ」

「嫌いになんてならないもん!」

「そうか、ならばもしも僕よりも好きな人が現れたのなら捨ててくれ」

少年の声は悲哀と懇願に満ちていました。




まるで、消えて仕舞うかのように。

「…………」

「……もう……帰ろうか。きっと君の家族が心配してしまう」

少年は少女の手を取りもと来た道を帰りました。

「……ま、またね!玉藻にーちゃ!」

「……あぁ、また……会おう」

そう言った少年は振り返らず森へと帰ってしまった。

少女は少年の背中が見えなくなるまで見送り続けた。




次の日から少年は森にも現れることがなかったのであった。