☆大貴side☆





人生、何があるかわからない。






俺はとある事情から学校へは通わず、午前中を家で過ごし、午後を土木沢高校図書室で過ごすことがお決まりだった。

誰もいない、静かな場所。

俺はそこで、もう一生叶うことはない夢を、追い続けていた。



静かにいつも通りに本を読んでいると。

…どこからか溜息が聞こえた。




溜息の主は、この間土木沢高校に転入してきたという、柏木夢子と名乗る、俺と同い年の女だった。

“夢子”という、なんとも良い名前を持ちながら、彼女は決して笑わない。

…笑わしてやろうと思った。

だから俺はショッピングモールへ連れだした。



家と学校を往復する毎日。

つまらなくて、退屈だった。

でも親しい友人なんてモノは存在しないから、遊ぶ奴もいない。

…ユメは、俺の初めてと言って良いほどの友達だったんだ。




「大貴、あんた最近明るくなったわね」



いつも通り学校へ行く間際、母さんに言われた。



「そう?
まぁ最近、友達出来たからね」

「友達?
珍しいわね、あんたに友達が出来るなんて」

「うん。
俺も珍しいって思っている」