桐野くんは、顔をしかめた。

…聞かれたくない、触れてほしくない話題らしい。




「…ユメ」

「何…?」

「…俺のこと聞いて、何があるの?」



何があるのって…。



「毎日、私たち図書室で会うでしょう?
それなのに、私は桐野くんのこと、何も知らない」

「俺だってユメのこと、何も知らないよ」

「私は…桐野くんが、知りたい」



素直に出てしまった言葉。

言葉は時に刃と化し、その人の心をえぐる。



…桐野くんは、寂しそうな笑みを浮かべた。





「…ゴメンネ」

「え?」

「…俺はユメを知ろうとは思わない。
確かに俺らは、図書室で毎回会っている。
ユメが俺のことを知りたいと思う気持ちはわかる。

…でも俺は、ユメを知ろうとは思わない。
だからユメにも、俺のことは教えられない」




…どういうこと?




何故桐野くんは、そう頑なに、

自分のことを言おうとしないのっ…?