放課後。

私は舞耶たちと別れた後、図書室へ向かう道を歩いていた。



グラウンドでは部活を始める運動部たちが、それぞれ準備を始めている。

しかし図書室がある別館へ進むにつれ、徐々に人は少なくなり、別館の下では誰の声も聞こえなくなった。

聞こえるのは、風で木々が揺れるカサカサと言う音と、小鳥の鳴き声だけ。

それ以外は音のしない、本当に静かな場所。



それなのに、桐野くんは図書室へ現れる。

目的がなくちゃ、来ようと思わないだろう。




その上図書室は別館1階の1番奥にある。

手前に授業で使うような音楽室や理科室などがあるので、1番奥にある図書室へ行くのは、図書室に用事がある人だけ。




私はガラガラといつもの音を立て、中へと入る。

相変わらず人気(ひとけ)のない、静かな場所。




「…ユメ」



昨日と同じところから、桐野くんは顔を出す。

手には相変わらずの本の山。

そして変わらない私服姿。



桐野くんは学校内にいるにも関わらず私服だ。

そしてどの私服にも、変わらずあるのは、首元をあたためるもこもこ。

色は毎日違うのに、もこもこがあるのは変わらない。