桐野くんは頑なに、本を教えようとしない。

場所さえも教えてくれない。




「桐野くん、私に隠し事するの?」

「いや…そういうわけじゃ……」

「なら教えてくれたって良いじゃない?」

「…」



桐野くんは右手を上げ、首の後ろに持って行く。

目線は私に合せない。



「…別に良いけどさ。
私たちはただの友達であって、カレカノではないからね」

「ユメっ…」

「桐野くんが何者か、何故私に関わるのかわからないけど。
やっぱり大変だったよね私といるの」

「何言っているんだよユメっ…」



確かに。

何言っているのよ私。

口が…言うことを…やめないっ……。




「もう来なくて良いよ。
来たいなら来ても良いけど。
私はもう来ないから」

「ユメっ…!」

「…サヨナラ、桐野くん。
ありがとう……」



私は踵を返し、図書室を出て行った。






桐野くんが追いかけてくることはなかった。