「おはよう、萌」
朝学校に来たら既にさとしは登校していた。
「あ、さとし……あのね…」
挨拶もそこそこに、昨日のことを報告しようとしたら。
「あ!さとしく~ん!おはよ~♪」
いつにまして明るい千歳の声に阻まれてしまった。
「あ、岩山、おはよ」
普段通りに挨拶してるだけなのに、それを寂しく思うのはいけないことだろうか。
「……さとし、昨日はごめんね…」
結局、私は言いたいことも言えずに別の話をしてしまった。
「ん?ううん。気にしてないよ?」
………それはそれでなんか悲しい。
私は欲張りだ。
人一倍欲張りな癖に人一倍臆病だ。
「ねぇ、さとしくん。わからないとこがあるんだけど、教えてもらっていいかなぁ?」
「ん?いいよ。どこがわからないの?」
………私だけだろうか、千歳のさとしに対する態度が昨日までとは違って見えるのは。
さとしもさとしで笑顔で対応してるし。
…なんか二人の間で二人だけの空気が作られていくようで。
私はそんな二人を見ていることが耐えられずに教室を飛び出した。


