「どうしよう…、忘れ物しちゃった」
ぱたぱた
ある日の放課後。
帰宅途中で忘れ物に気付き、引き返してきた。
もう誰もいない校舎。
しんと静まり返った廊下は自分の足音しか聞こえず、薄気味悪い。
「早いとこ取ってすぐに帰ろ」
「―――――――――!」
ん?
私の教室から話し声が聞こえ、思わず立ち止まった。
「でもさ~、萌もバカだよね。気付かないなんて」
…私?
「ほんとほんと!まじ呆気なかった!私のこと無二の親友だとか言っちゃってさ、最後まで信じてんだもん、最後には笑っちゃった」
…この声は…、千歳!?
「しっかし、千歳もよく考えたよね。最終的には萌が裏切ったことにするって!あれにはまじ感心したもん!」
「だよね!私も千歳だけは敵にまわしちゃいけないって再確認させられたし!」
…うそ!千歳が…いじめの首謀者?
そんなわけ…ないじゃない。
だって私達は…親友だよ?
『ずっとずっと友達だよ!!』
『うん!私達は永遠に親友でいようね!』
そう約束したじゃない。
その言葉は…嘘だったの?
「私があいつのこと、大っ嫌いってことも知らないで」
ガラ
「うそ…だよね?」
「萌!?」
「ねぇ、千歳。嘘でしょ?」
「……………」
「千歳、答えて!」
「……………」
「千歳!」
「………そうよ」
「……ぇ?」
「あ~あ、バレちゃった。私の計画は完璧だったのに」
「…計…画…?」
「あんたをストーカーさせ、スクープ写真を撮らせる。それをばらまき、萌の信用を失墜させる。それが成功したらあんたに水をかけ、保健室に行ってこいと言う。そのときにしっかり自分は萌の味方だと信じ込ませて」
「そ、そんな…」
「さらに保険医と二度目のスクープ写真。完全にあんたは裏切り者。すべては計算通り」
「うそ…」
「嘘じゃない。これが真実。あんたが信じて疑わなかった友情や恋愛なんて所詮そんなもん」
「なんで…?」
「なんで?決まってるじゃない。あんたが気に入らないからよ」
「気に入らない…?」
「そう、ついでにあの保険医もね」
気に入らない奴を一気に潰すことが出来て一石二鳥だわ、と笑う千歳。
周りの取り巻きもクスクス笑ってる。
…信じられない。
これがあの優しくて明るかった千歳?
別人なんじゃないだろうか。
私は忘れ物を取るのも忘れて無我夢中で教室を飛び出した。
後ろから聞こえる耳障りな笑い声が聞こえないふりをして。


